『若き友人たちへ』-筑紫哲也ラスト・メッセージ(集英社新書)を読んだ。
筑紫哲也さんは03年から08年まで大学院で講義を持たれていた。
それを書籍にまとめようという動きがあり、「若き友人への手紙」という連載を
持つことになったのだが、連載は2回のみで筑紫氏は他界する。
この本はその遺志を受けて、講義テープを原稿に起こしたものだ。
私にとって筑紫氏はニュースキャスターでしかなかった。
彼がそのニュース番組で持論を話すコーナーは私にとっては特に関心のある
ものではなかった。
この本を手にしたのも他に読みたい本がなかっただけにすぎない。
講義録なのでこの本は読みやすく、講師である筑紫氏の思うところが理解
しやすいものになっている。
ジャーナリストは「お節介」業であると氏は書いている。
これは私には新鮮な表現だった。そう思って読むこの本は抵抗が少なかった。
「自分の頭で考えること」を氏は若者に伝えようとしている。
大学院生では遅すぎることのようには思うので、氏が書籍にしようと
考えたのも「お節介」のなせる業なのだろう。
大学で学ぶことは「疑うこと」というのも言いえて妙である。
この本ではあとがきの代わりに筑紫氏の高校時代の文章が載っている。
小学生の頃からの思い出を綴ったものと言えるが、疎開生活の描写など
自分の気持ちに正面から向き合っていて、高校時代の心の鋭さが如実に
出ている文章という印象を持った。
もっとこのひとの「お節介」に触れてみたかったと思う。
若き友人たちへ―筑紫哲也ラスト・メッセージ (集英社新書 515B)
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