勢古浩爾さんという方がおられます。
あるページではモラリストと紹介させていましたが、
批評家という方があっているように思います。
最新の著作である『ああ、自己嫌悪』(PHP新書)にある
著者略歴によれば、洋書輸入会社に勤務なさりながら
著述をなさる、二足の草鞋をおはきのようです。
著作の中心にあるものは、「ふつうの人」の立場から、
「自分」が生きていくことの意味を問い続けることだそうです。
たしかに勢古氏の本のタイトルには、「わたし(私)」「自分」
「男(おやじ)」「人生」「生活」といったことばが並んでいます。
私は、勢古氏の本を10冊ほど読んでいますが、
『わたしを認めよ!』(洋泉社・新書y)という題名に象徴される
「自分」が「自分」として認められる生き方について、
重くないけれど軽くなく、徹底的のようにみえて中途半端な
印象を持たせる勢古氏の文体に安心しながら、
自分なりに思いを巡らせているようです。
氏の学者など他者の批判から論じていくスタイルには
抵抗があったり、よくわからなかったりしますが、
自分で自分の書いたことにつっこみを入れる表現は、
「ふつうっぽく」感じて、多すぎなければ私にはいい中和剤で
テンポ良く読み進められる感じです。
勢古氏の本にあった表現だったと思うのですが、
「自分を全うする」というのは、
私の中ではとても大事なフレーズになっています。
ちょうど自分が考えていたり、悩んだりしていることに
勢古氏の本がストライクを投げてくれていますので、
これからもしばらくは手にとっていくことになるでしょう。