この本は講談社現代新書で著者の速水敏彦氏は
名古屋大学大学院教授で教育心理学がご専門。
タイトルはだから奇をてらってというより、現状から
気になることへの警鐘という意味合いが強いと思う。
その気になることはなにか。
「仮想的有能感」に伴う他者軽視の傾向である。
「仮想的有能感」とは、本書p118によると、
自己肯定感の中にある得に他者軽視を通じて
生じる偽りのプライドであるという。
「若者は勝手に他者の能力を軽視することで、
偽りのプライド、すなわち仮想的有能感を抱いて
行動するのである。」と書かれている。
人は自分が認められる存在でありたいと思うが、
自分と無関係の他者を軽視することで、それを
保とうとしているというのである。
つまり、自分を守るために、見えない他者をバカに
してしまっているというのである。
「自分に甘く、他人に厳しい」とか「「悪い」と思っても
謝らない」とか「すぐにいらいらして、キレる」という
行動がこの現れだという。
この傾向は本人にとって無意識のうちにそのように
振舞っている傾向のように私は思う。
本書で、この傾向への対策として著者は、
「しつけの回復」や「感情の交流の場を増やす」と
いったことをあげているが、個人主義で自分中心に
生活していることから、他者や社会への関わりを
確保する時代になってきているような印象をもった。
この本の帯に「「自分以外はバカ」の時代!」と
書かれていた。
皆がそう思ったら、社会は成立しなくなるし、想像
しただけでもぞっとした。
認めあることが当たり前の社会になってほしいものだ。