『空中ブランコ』(文春文庫、奥田英朗著)を読んだ。
奥田氏の直木賞受賞作である。
短編5編からなるが、どれもこころにひっかかるものが
あって、普通でない状況になっているひとが、主人公の
精神科医のもとに通うことでやがてその状況から解放
されていくというものである。
その主人公がとんでもない精神科医なのだ。
診察室に入ると素っ頓狂な声で「いらっしゃい」といい、
ミニスカ姿でなまけた感じの看護婦と注射を打ちたがる。
言うことすること全て物怖じせず、マイペースなのに、
なぜか周りはそれを諦めて受け入れてしまう。
そうこうするうちに患者は自分のわだかまりの原因を自覚し、
症状を起こしていた原因と向き合っていき、前に進もうと
していく。
あっという間に読める本で筋立てもシンプルである。
こころにモヤモヤのあるひとが、そんなものが全くないひとの
言動に振り回されるうちに、自分だけと思っていたモヤモヤは
ひとは皆持っていたりするし、そういうものなら、もう少し
軽く考えてみよう、そのモヤモヤを解放することを経験して
いくことで立ち直っていこうとする話しである。
ここまでシンプルなのが私には好感が持てた。
気分が重い時に読んでもいるのだが、スッキリ感があった。
読み返す本ではないかもしれないが、シリーズになっているので
読み続けてもいいかなと思った。
空中ブランコ (文春文庫)
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