今年の直木賞作品だからというわけでなく、読むつもりだった
天童荒太氏の作品を読了する。
亡くなられたを覚えておくための旅を続ける主人公を『悼む人』
といい、彼と彼の母、たまたま彼を知ることになった雑誌記者と
夫殺しをした女性の1年ほどの間の出来事がそこに綴られている。
ひとは亡くなった後は忘れ去られてゆく。
そういうことについて考えさせられる作品だと思う。
生と死、愛、家族、その中にある大事なものを形にしようとしている。
悼む人はその行為をするために、亡くなられた場所の近くでひとに
このような質問をしてまわる。
「亡くなられたかたは、誰に愛されていたでしょうか。誰を愛して
いたでしょうか。どんなことをして、人に感謝されたことがあった
でしょうか。」
亡くなったひとを忘れないで「悼む」ために大事なことは何なのか。
つきつめたらこの3点になったということだ。
自分に照らしてみる。
周りの人に照らし合わせてみる。
生きてきたということは、いいことと悪いこと、愛しあったことと
そうでないこと、感謝しあったこととそうでなかったことと、多分、
半々だったりするのだろう。
だけど、ひとを覚えている(く)ならば、それは、自分にとって
かけがえのない出来事があるはずであろう。
ただ、自分の中のどこにあるかを忘れてしまったり、その引き出しを
開けないでいることはある。
私を「悼む人」のように悼んでくれるひとがいるかどうかはわからない。
悼まないまでもつないでほしいと思うひとはいる。
私が密かに「悼む人」のように悼もうと思うひともいる。
そんなことにも気づかされた1冊だった。
悼む人
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