昨年末、正月休みに読む本を探してエキナカの本屋に入った。
この本屋で物色するのは基本文庫本である。
平積みのものを見ながら、気になるものがなく、目線を上げた時に、一冊の本の表紙に、いや一枚の絵に目が止まった。
久しぶりに観た懐かしい絵を思いがけず見つけたような感覚だった。
その絵が表紙になっている本は、
『奇蹟の画家』(後藤正治著、講談社文庫)である。
著者の後藤氏はノンフィクション作家。
つまり、奇蹟の画家は実在する。
画家の名は石井一男さんという。
彼のことは3年ほど前に、テレビ「情熱大陸」で紹介された会を偶然見たので知っていた。
その時に気になったのでネットで少し調べたから、この本の存在も知っていたと思う。
しかし、私の記憶の片隅にしまってあって、実際は忘れていた。
表紙の絵をみた途端に思い出した。
そのときの印象を思い出したい気持ちもあってこの本を読んだ。
本の内容はamazonの紹介記事に書かれてある通りである。
「ノンフィクションとは、対象を解きほぐしたいという渇望に導かれてあるものであるが、本書の場合、そのベクトルは少し違っていた。解くのではなく、より深く感受したいといういという希求であったように思える」あとがきで著者自らが書いたように、多くの人に「感受してほしい」作品がここにある
石井氏のことが書かれているというより、石井氏の絵と出会ったひとたちにとって、彼の絵はどんな存在であったかを取り上げる事で、彼や彼の絵を感じさせるものになっている。
画家が絵にこめるもの、絵の鑑賞者や購入者が絵から感化されるもの、絵の存在意義とは何かまで迫っている。
この本の帯には、こういう一文が引用されている。
普遍的にいい絵というものはなくて、あなたに何かを語りかけてくる絵が、あなたにとっていい絵です。
この引用文の下に「石井一男展」が今月東京である事が載ってあった。
土日が入っているので観に行こうと思っている。
私は石井氏の絵と語りあえるだろうか。
奇蹟の画家 (講談社文庫)
amazonの本の紹介ページに飛びます。